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翻訳に「英会話」は必要か?

翻訳をやるのに英会話は必須かというと、けっしてそうではありません。むしろ、ほとんど関係がないといっていいでしょう。英語をしゃべるのが苦手でも、すぐれた翻訳をやっている人は大勢いるはずです。翻訳に必要な英語力は、英和翻訳にかぎっての話ですが、読解力につきると思います(ただし、その読解力を身につけるためには、英語の文章をひたすら読むだけでいいかというと、耳から聞くことも併用するほうが、ずっと効果的とはいえます)。さらにいえば、「会話」ができることと読解力のあいだにも、直接の関係はありません。とはいえ、翻訳者にだって、そのほかの英語力が必要なこともあります。翻訳をやっていると、わからないことがいくつも出てきます。現代の日本では、辞書類、インターネットなどを駆使すれば、その大半は調べがつくのですが、どうしても原著者に尋ねなくてはわからないこともたまにあります。そんなとき、英語で手紙が書けなければ、質問状もだせません。それから、まかりまちかって超ベストセラーを訳してしまったとき、原著者が日本にやってきて、どんな人間が自分の本を訳しているか知りたい、なんて言いださないともかぎりません。超ベストセラーを訳すかどうかは、翻訳者の技量や経験など関係ありません。宝くじに当たるようなものかもしれませんが、三億円か当たるよりは確率が高いといえるでしょう。そんなわけで、たまたまベストセラーを訳してしまい、日本にやってきた原著者がさほど翻訳に理解がない場合、こちらのしゃべる英語が下手たったら、「こんな英語の下手なヤツが自分の本を翻訳しているのか」とショックを受け、「訳者を替えろ」などと編集者に圧力をかけるかもしれない。そうなったら、こっちはクビになるかもしれないとまあ、これはなかば冗談としても、英語を商売にしている身としては、やはりしゃべるほうも少しはましにならないと、格好がつかないではありませんか。

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