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オイルランプやたいまつの明かり

ランプの底にはヤギの姿が刻まれ、受け皿部分には燃料であった獣脂の痕跡があった。同じドルドーニュ川の支流ベゼール川渓谷にある有名なラスコー洞窟の壁画は、後期旧石器時代終末期のいまから1万6000年ほど前に描かれているが、そのラスコー洞穴でも石灰岩製ランプが見つかっている。真っ暗な洞窟のなかで絵を描いていたのであるから、明かりはなくてはならないものだったはずだ。洞窟の壁には「くぼみ」がつくられ、オイルランプやたいまつの明かりが置かれた。いまでいう室内灯に相当する。壁の「くぼみ」は、古代のローマ建築ではとくに盛んにつくられ、中世を経て現在まで、広く用いられている。この「隙間」「くぼみ」をニッチ(niche:日本語では「壁疸」)と生態学の分野では、ある生物が環境に適応して棲息している場所のことをニッチと呼んでいる。もともとは『種の起源』を書いたチャールズ・ダーウインの言いだした概念だが、英国のチャールズ・エルトンがそれをニッチと呼び換えた。広い概念を短い言葉で示すことによって、その概念は多くの人によって使われるようになる。ふつう、ニッチは「生態学的地位」と訳されるが、ある生物が、あたかも「隙間」や「くぼみ」に寄り添うかのように、特定の場所やそこで得られる食物に適応して独自に生き延びることをいう。すばしっこい経済学者や経営学者が、この便利な概念に目をつけないわけはない。